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2020年個人的ベストソング25

 ベストソング記事。2010からやっていて11年目。

 ルールは毎年ちょっとずつ変えているのですが、去年と同じく、2019年以降に発表されて2020年に存在を知った楽曲を、1アーティストにつき1曲のみというルールで選出しています。

 リンクは全てYouTubeです。YouTube Premium限定動画もあります。

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#25 誰がその鐘を鳴らすのか? / 欅坂46

 欅坂としてのラストシングル。それにふさわしい壮大な曲だと思います。

 櫻坂になって楽曲の方向性が変わったことも含めて、あらゆる意味で欅坂は平手友梨奈あってこそだったのだなあとも。

 欅坂、グループアイドルとしてはいろんな歪みを解消できないままの幕切れとなりましたが、それでも『サイレントマジョリティー』を始めとした楽曲は2010年代後半を代表するだけの存在感があったし、個人的にも楽曲だけ見れば数あるアイドルの中でもかなり好きな部類でした。『エキセントリック』と『アンビバレント』はたまに聴き返したくなる。


#24 夜に駆ける / YOASOBI

 世間の流行と逆張りしてるわけじゃないですよアピール枠。

 特に書くこともないのですが、流行ったのも納得の完成度の高さ。楽曲の密度の高さと、適度に歌唱力が求められる難易度。Bメロの「いつだってチックタックと 鳴る世界で何度だってさ」のリズムが好き。

 それにしてもYOASOBIの「原作小説を楽曲で表現する」というコンセプトは今後も守られるのだろうか。ここまでアーティストとして爆発的に人気が出ると、もう普通にタイアップとか取っていくのでは。


#23 Henceforth / Orangestar

 Orangestarさん、待望の復活。そこまで複雑な音作りをしていないのに安っぽく感じさせないセンスはそのままに、それでいて以前よりもクオリティとしては上がっている気がします。IAの調声も独特。


#22 セカイはまだ始まってすらいない / ピノキオピー (ワンダーランズ×ショウタイム)

 プロセカ。ラスサビの2段階転調、明るい雰囲気なのに退廃感があるあたりがとてもピノキオピーっぽい。

 ボーカロイドの曲で「HEY!HEY!」みたいな掛け声が入ってるの苦手なんですよね。Mitchie Mさんの曲とか。どんなに頑張っても圧倒的に不自然だし、そこじゃないところで戦えばいいのに、と思ってしまう。

 なのでこの曲も人間歌唱Verの方が好きです。鳳えむさんの声が良い。


#21 この夏をジャムにしよう / 日向坂46 (3期生楽曲)

 日向坂46。この1年、握手会とライブが延期になった分をテレビ出演に全振りして活躍の場が一気に広がりました。

 アイドルとしてはもちろん好きですが、楽曲としてはどこまで行っても秋元康作詞の限界を感じる……。『アザトカワイイ』の歌詞とかほんとにもう……。

 なのでこの曲も歌詞は別になのですが、曲調が好き。イントロの軽快な電子音と、3期生4人の声質の違いからくる掛け合いの綺麗さ。ライブで映えそうですね。日向坂のライブ観たことありませんが……。


#20 THIS IS HOW WE DO / Alice × Lighter190E

 テンタクルズの中の人のコラボ。これ任天堂的にどこまでアリなんだろう? という疑問はありつつ、2人の声質の違いがとても良い方向に作用していて名曲。特にいとうりなさんの声がとても好き。

 サビ後の展開での「just like a painted paiting. just go now, get it on!」のフレーズが、リズムもメロディーも最高に気持ち良い。


#19 ネコちゃんになっちゃうよ〜 / クマリデパート

 今年はクマリとブクガの新曲が少なかった印象です。この曲はサクライケンタ作詞作曲ではないのですが、良い悪いとかそういう評価軸を超越した電波曲

 こういうメロディーラインとして存在しない半分セリフのような楽曲、三次元アイドル以外だと曲として成立しないという意味でアイドルソングの極致。だからこそこれを初音ミクでやりたくなる人の気持ちはわかるんですけど、それで一般受けするラインを超えるのはあと10年は無理だと思います。


#18 FIVE SHOOTERS / lyrical school

 リリスク。アイドルとしては全然ライブも行けてないし配信とかで購入してすらいないのでいよいよもうファンでも何でもないなあという感じですが、新曲は一応追ってます。

 Bメロ?入りの「ずっと走ってきた 視界変わってもI want to be me」、の「I want to be me」のところの音の置き方が凄く好き。そこからの「風で髪ぐちゃっても 真摯なハート見せる君に」の3連符が気持ち良い。

 ヒップホップ特有の、英語詞を日本語的なローマ字読みせずにネイティブ発音のカタカナ読みによって韻を踏む手法がぴったりハマっていて心地よいリズム。どこから歌詞考えてるんだろうといつも不思議に思います。


#17 アカシア / BUMP OF CHICKEN

 最悪なタイミングでのリリースとなったポケモンGO×BUMPコラボ。

 ファンでもなんでもない私の中でのBUMPは『RAY』以降更新されておらず、『Hello, world!』や『アンサー』などを聴いてもそんなにテンションが上がらないというか、RAYを作ったアーティストの新曲はこんな感じだよね、みたいな印象だったのですが、久々に何度も聴きたくなるほど気に入りました。

 BUMP、すっかりロックバンドの大御所というかスタンダードみたいになっていますが、この曲も含めてサビのスムーズな転調とか結構変化球なことやってるなあと改めて思います。このあたりも米津さんに影響与えている部分なのかなあ。


#16 Baby baby Cupid / 星歴13夜

 ぜん君+Future Bassのような。中毒性高め。

 GESSHI類さんの作詞の異次元さはもう少し評価されて良い気がします。Bメロの男女の掛け合いからのサビの入りが「笑うな♡」って。どうしたらこんな歌詞が書けるのか……。


#15 メルティランドナイトメア / はるまきごはん feat. 初音ミク

 2018年発表だけど2020年にアルバムが発売されたから2020年ということにします。

 プロセカで知ってハマりました。最近のボカロは……とか言ってちゃダメですね。相対性理論を思い起こさせるファンタジックな言葉選びと小気味よいギターサウンド。サビの入りの「疑ってしまうような 不可侵のスターリーナイト」「ぎゅっとしてしまいそうな イノセンスなロンリーガール」、語感が良すぎる。

 PVの終末観はsasakure.UKさんっぽい雰囲気も感じられてボカロというジャンルが脈々と続いていることを感じさせられました。


#14 I see… / 乃木坂46(4期生楽曲)

 楽曲の「SMAP感」がファン以外にも話題になった楽曲。MVも含めてサビの楽しさの演出が完璧。

 乃木坂はアイドル人気の割に代表曲がないでお馴染みでしたが、4期生楽曲の攻め方はそのあたりも含めて次世代を担っていくのだろうなと思います。


#13 メランコリックサーカス / meme tokyo.

 でんぱ組の姉妹ユニット。今年知ったアイドルでは一番好き。

 数年後に聴かれることを微塵も考えていない言葉選び、メッセージ性も何もかも捨てて語感だけで成立させてる歌詞、結構好きです。まあmeme tokyo.の最近の歌詞割とメッセージ強いですけど。2番の「パリ シャルル・ド・ゴール空港 経由エッフェル塔バンジー」、意味はわからないけど無限に口ずさみたくなる。


#12 恋のうた (feat. 由崎司) / Yunomi

 Yunomiさんがついにアニソンデビュー。トニカクカワイイも原作途中まで読んでましたが、ここでYunomiさんをフックアップしてくるの偉い。『かぐや様』の「チカっとチカ千花っ♡」くらい偉い。

 Future Bass×和風というYunomiさんの武器がしっかり作品とも合っていて完璧。歌詞の密度と早口で恋の鼓動の高まりを表現するなんて手法はまさに作詞作曲を両方手掛けるからこそなせる業だし、今後も年1~2くらいでタイアップが見れそう。

 あとついでに『インドア系ならトラックメイカー』のにかもきゅさんが声優デビューしてたので、声優として歌唱してYunomiさんがプロデュースとかあったらアツいですね。……StylipS……。


#11 お勉強しといてよ / ずっと真夜中でいいのに。

 ずとまよ。昨年の評価から変わらず、YouTubeに自分で「1コメ」とか書いちゃうセンスは自分の感覚とは全く相容れないなあと思ってしまうのですが、それはそれとしてボカロという音楽ジャンルのど真ん中というか、最大公約数としての正解を一度も外さずに出し続けているのは凄いなあと思います。楽曲も歌詞もPVも。

 歌詞は相変わらず苦手なんですが楽曲の中毒性は認めざるを得ない。Bメロが1度終わった後、まるでサビに入りそうなフリで「褒めあいライム・合図 変わらず」で同じメロディーを繰り返す構成の妙はさすがに凄い。

 何よりもピアノとベース、そしてストリングスの使い方が綺麗。最近wowakaさんの楽曲聴き返してて「結局wowakaさんってピアノでリフ作るのが一番得意だったんじゃないか」と思い始めたんですが、そういうところも含めて、ずとまよとかYOASOBIって10年代ボカロの一つの到達点だよなあとも。


#10 第六感 / Reol

 Reol。この1年でCMに起用されたり名前を見ることが一気に増えた印象。年始の『HYPE MODE』(AppStore CM)の時点でかなり個人的上位でしたが、この楽曲はそれをさらに超えてきました。

 とにかく歌詞が綺麗だしメロディーにバッチリハマってる。Bメロの「あたしはまだ未完成で不完全」という畳みかけ、そこからサビの盛り上がりが気持ち良すぎる。



#9 東京ラットシティ / CYBER

 CY8ER。1番のサビが終わった後の2番のAメロ入りで、和楽器ではない音が入ってくるときの感じが好きです。

 来年1/10の解散が発表されました。BPM15Qから紆余曲折はあったものの、間違いなく楽曲ごとに進化しているアイドルだったので、残念。yunomiさんの楽曲は今後も聴き続けられそうなのが救いではありますが……。


#8レプリカント / ヨルシカ

 ヨルシカ、アーティストとしてはずっと好きですが、ナブナ時代に比べると楽曲単位で好きなものはあんまりなくて、もっと言えば昨年の「さよならたりないふたり」でフィーチャーされた『ただ君に晴れ』がずっと刺さったままだったりしたのですが、

 この曲はかなり。こういう爽やかで鋭いギターのロック、ヨルシカでは割と珍しい気がする。曲調が爽やかなのに歌詞が異常にネガティブというギャップも良いし、2番のAメロに入る不穏なサウンドが何度も聴きたくなるフックになってます。

 あと、この曲を単曲ループしてると全く繋ぎ目がわからなくて気づいたら何周もしてる。


#7 チューリングラブ feat.Sou / ナナヲアカリ

 昨年でいえばイコラブ『Want You! Want You!』、三パシ『パステルレイン』のような、スタンスとしては嫌いだけど本能的に好きな曲。この順位に置くくらいには無限にリピートしてました。サビ前の「DAZING!! モーションは相対性にステイ」の音階がたぶん日本人みんな好きなやつ。

 ピコピコチューンとギターとかもう全体的に手堅すぎるし、歌い方も全部「これやれば喜ぶんでしょ?」で満ちている。でも実際クセになるから悔しい。

 何も繋がりのない偉人の名前を脈絡なく引用してきたり、「エビデンス」「Q.E.D.」などあからさまに理系への雑なイメージだけで構成された歌詞、というか「ASAP」「BPM」は理系ワードですらないし潔さすらある。

 でもこういうアニメの表面だけを薄くなぞった主題歌ってそれこそ畑亜希さんやヒャダインさんがよくやる手法でもあったから、ある意味正統派なのかもしれない。

 ボーカルも、ナナヲアカリに比べてSouさんの声の量産型歌い手感は若干ありますが、逆にEveさんほど自己主張が強くない分デュエットとしての相性は良い気がしました。


#6 Q / パスピエ

 私の中では今一番新曲について信頼しているバンド。繰り上がった結果ですが。

 サビの「今日も愛されたいと口ずさむ君に 違う言葉をあげよう」というフレーズが本当に好き。サビ前のドラムの盛り上がり方も本能的に気持ち良い。ちゃんと音楽理論に裏打ちされて攻めたことをやってるバンドがたまにストレートを投げると本当に強い。

 今年の楽曲としては『SYNTHESIZE』も同じくらい好きだし、『まだら』『OTO』とさらに実験的な楽曲もどんどん投入していて改めて凄いバンドだよなと思い知らされました。アルバム『synonym』の中では『プラットホーム』も好きです。


#5 かつて天才だった俺たちへ / Creepy Nuts

 Creepy Nuts。『ヘルレイザー』と悩みましたがこちらに。

 昨年末、「アーティストとしては人気がどんどん上がっているけど、代表曲として『たりないふたり』『合法的』を超えられてないので来年はそこに期待」みたいなことを書いていて、まさかそこからDJ松永さんが地上波で週2本のレギュラーMC、R-指定さんはドラマ出演というレベルで人気になるとは思いませんでしたが。

 楽曲としてブレイクが期待されていた年始のドラマ主題歌『オトナ』、菅田将暉コラボ『サントラ』となかなか超えられずにいましたが、この曲で一つそのハードルを飛び越えてきた印象があります。

 歌詞の韻の踏み方の芸術性は今さら取り上げるまでもないのですが、メッセージとしてオードリー若林さんからの影響を色濃く受けた結果、「ただ単に他人を否定する価値観は時代に合ってない」という世間の変化をしっかり掴んだ歌詞になっているのが良い。世間の生きにくさを軽減する方を向いて戦ってない人たちはダサい。

 サビもストレートに良い曲。「未だかつて→」以降の「e」の音のメロディーラインが綺麗。R-指定さん、めっちゃ普通のこと言いますが普通にボーカリストとして上手いですよね。


#4 アブノーマルQ / 相沢梨紗(でんぱ組.inc)

 今年唯一の、そしておそらく最後になるであろうwowakaさん作詞作曲の新曲。

 「wowakaさんにアイドルをプロデュースしてほしい」と数年前に書いた気がしますが、そうなった場合はこういうものになっていたのかもしれない。

 めちゃくちゃ好きなんですけど、いろんな補正を無理やり振り払って言うなら、Bメロまでめちゃくちゃ盛り上がって期待を煽るのにサビで最高音を更新しない不完全燃焼感が……サビだけ『アンチテーゼ・ジャンクガール』に接続したくなる。もしかしたらボーカリストの音域とかで何らかの指定があったのでは、と邪推したくなるけれど、『ai/SOlate』期のヒトリエ楽曲ってこんな感じだった気もする。

 そして本当に欲を言えばこれのセルフカバーが聴きたかった……。実際情報解禁された後であってもセルフカバーをライブで披露していたかは怪しいところではありますが、米津さんがそのあたり毎回アルバムに入れていたので、やっててもおかしくなかったのではないかなあとも。


#3 curved edge / ヒトリエ

 3人体制になって初の新曲。いわゆるwowaka色の薄れた後期ヒトリエをずっと受け入れきれずにいた身として、正直新曲が出ても好きになることはないだろうと思っていました。

 で、公開されて1週間聴き続けた感想として、「思ったよりもヒトリエだった」というのが率直な感想。

 シノダさんのボーカリストとしての声質が違いすぎるのでその点で同じバンドに聞こえにくい部分はあったのですが、この曲をwowakaさんのボーカルに脳内で置き換えてみたら、全然しっくり来たというか、ちょっと攻めた曲として『HOWLS』に収録されていたとしてもそこまでの違和感はないな、と。アブノーマルQより上に置いたのはそういう理由です。


 「期待しないは承知の上 常識なんて範囲外で 超ピーキーなハイが鳴いて 三桁W、コーン揺らして」というフレーズの独特なメロディーラインと少しずつ盛り上がっていく感じなんかはまさに他のバンドではなかなか聞かない、クセになる展開。

 ハードルを最大限に上げてしまえば手放しに褒められるわけではなく、気になるところは多々あるし、この楽曲に対して「ヒトリエの進化」と言ってしまう人たち全員殴りたくはなりますが、

 気づくと毎日聴きたくなるし1時間くらいずっと聴き続けていても不快感がない。これ自体がまさに、ヒトリエの新曲が公開された時の昔の自分と全く同じ感覚。

 おそらくそれは、歌詞はともかく曲部分のフレーズについてはかなりそれぞれのメンバーに任されていた部分が大きくて、その延長線上にある楽曲として捉えられるからなのでしょうが、

 それと同時に、この1年半という時間の中で自分が、ヒトリエの過去の楽曲やライブ映像を何度も観返して、ヒトリエというものが何なのかをどうにか再構築し、wowakaさんのいないヒトリエを迎える心の準備をができていたのかもしれないと思います。

 逆に言えば、wowakaさんがいる状態のヒトリエでwowakaさん以外が作詞作曲したものが発表されていたら、それがどんな曲であっても受け入れられなかっただろうとも思うので、それについて軽蔑する人もいるかもしれませんが。


#2 ジャンキー / 赤い公園

 赤い公園。今年リリースされたアルバム『THE PARK』収録曲はどれも良くて、『絶対零度』の変拍子はハイセンスすぎたし、つい先月に発売されたシングルの『オレンジ』『pray』も好きで甲乙つけがたいのですが、単純に自分の好きな曲調という意味でこの曲を選びました。

 細かいギターのイントロからずっとリズミカルで気持ちよくノれる。

 「傷つけてくれてサンキュー くるしくて息を吸った 吸った息を吐いた 心がひとつふたつうねった」という言葉選びのキャッチーさもさることながら、フレーズの対比、韻の羅列ではなくてちゃんと芯を通した歌詞。音楽と言葉に対して真摯に向き合っていたのだなあということが改めてわかります。

 赤い公園、ボーカルの突然の脱退という一大事から、新しいボーカルを迎え、今年ついに新体制初のアルバムを発表して、まさに本格的に活動を始めようとするタイミングだったし、

 そういう明らかにポジティブな未来に向かっているバンドにしか見えなかったので、どうしてこうなってしまったのかと思います。もちろん、だからといって「そういう精力的に未来に向かっていく人が自殺なんてするわけない」などという陰謀論に加担するつもりは当然ないですし、本人にとってはそれを選択するに足るだけの、推し量れない苦しみがあったのだとも思いますが。

 ファンと言えるほど追っていたわけではない私よりももっとショックを受けているたくさんの方たちが、何とか折り合いをつけていけること、そして何よりも、残されたメンバー3人が、呪いではない形でその先に進めることを願います。


#1 ひまわり / 米津玄師

 1位。

 3年ぶりのフルアルバムとなった『STRAY SHEEP』は、『Lemon』『パプリカ』『まちがいさがし』『感電』が収録されている時点で大ヒットが約束されたアルバムではありましたが、

 その中に『PLACEBO』『Décolleté』といった今までにないテイストの曲があり、『まちがいさがし』の大胆なリアレンジがあり、というのは、米津さんが現状に満足せずにどんどん進化を続けていることの象徴でもあります。それでも150万枚という売上は異次元ですが……。

 その中でギターロックが逆の存在感を放つ『ひまわり』は、

 「嗄れた産声で歌う」「転がるように線を貫いて」「散弾銃をぶち抜け」「北極星へ舵取れ」といったフレーズと、シンプルなバンドセットで構成された音作り、4小節に渡って複雑にうねるギターリフに至るまで、

 wowaka/ヒトリエ楽曲の要素へのリスペクトが明確に散りばめられています。ここにはもう議論の余地はない。

 米津さんが次にアルバムを出す時にこういう楽曲を出してほしいという気持ちは少しだけありましたが、まさか本当にそうなるとは思わなかったので驚きでした。

 正直に言うともう少しBPMが速ければ……という感じもなくはないのですが、それを差し引いても大好きな曲です。そこであえて自分流に再解釈したものを出すというのも強いリスペクトを感じさせますし、様々なインタビューの中で徹底して『ひまわり』にだけは触れていないというところにも真摯さが見えます。(そこへの言及を期待してROCKIN'ON JAPANを購入したら一切触れられてなかったのは悲しかったですが)

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 ということで、2020年のベストソング、上位4曲は結果的に何だか精神性の強いランキングになってしまいました。

 もちろんそれで何か選出基準を変えたつもりはなくて、シンプルに好きな曲を並べただけではありますが、じゃあそういうバックグラウンドを抜きに評価しているかといえばそんなわけがない。

 2019年に起きたことというのはそれほど、自分の中での音楽、というか好きなものに対する姿勢を決定的に変えてしまう出来事であって、たぶんこれはもう戻らないと思うんですが、

 結局この先どんなアーティストが評価されてブレイクしたとしても、wowakaさんを最後まで評価しなかった世界の話でしかないんで、どうでも良いんですよね。嬉しくもないし。


 今年の選出に関して結構困ったのが、4~6月頃に聴いていた楽曲に対して、その当時の自分の精神状態があまりにも悪すぎて、その当時聴いていた楽曲を聴くだけで憂鬱な気分がフラッシュバックしてくるという部分だったりしました。

 特に4月。具体的には『Sunflower』(Orangestar)とか『サクラになっちゃうよ!』(Maison Book Girl)とか。ずっと家にいて人生に対して閉塞感しかなかった時の苦しい感じがそのまま結びついてしまっていて、なかなか……。なるべくフラットに選んではいます。


 そして津野米咲さんのことも。改めて、去年wowakaさんのことがあって、まさか今年もこういう形で自分の好きなアーティストのフロントマンが旅立ってしまうとは思いませんでした。

 2018年の1位に赤い公園の『消えない』を選んでいますが、この2010年から11年続けているランキングで、1位に選んだアーティストはwowaka/ヒトリエ・米津・ブクガ・リリスク・赤い公園の5組しかないわけで、

 そういうレベルで新曲を楽しみに待っていた1人のトラックメイカーがいなくなってしまったことをただただ残念に思いますし、もちろんそんなわけはないんですけど、どうにかならなかったのかなとも。


 それでもやっぱりwowakaさんの時に比べれば、それよりはもう少し赤い公園というバンドの未来に期待したくなってしまう。

 ということは、たぶんヒトリエの新体制に対してもほとんどの人は、バンドという単位で見た時に何かが終わったわけではないという目線で見ているのだろうなと思います。自分の中では一つのバンドとしては完全に終わってしまったんですが、それはたぶん一生わかりあえないのでしょう……。これ以上はベストソングの話でもないのでこれで。


 ひとまず来年2月にはヒトリエのフルアルバムが発売。シノダさん以外の2人が作詞作曲したものも含めて、どのようなものが出てくるか、割とストレートに期待しているし、期待できていることが嬉しいです。そう思いつつ、自分のヒトリエに対する感覚ってここ5年くらい常に不安定だったので、2月にアルバム聴いたらコレジャナイって喚いてるかもしれませんが。

 このランキングも毎年やるたびに劣化していっているというか、そろそろもう上位10組に新しいアーティストなんて1個も入らないんだろうなという感じはありますが、何だかんだで一応体裁は整えられました。来年はいよいよ怪しい気もしますが、年末にはまあやるか、って思ってるのでしょうね。そうだといいなと思います。