『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』配信開始に寄せて
メディア・カルチャー

『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』配信開始に寄せて

 いよいよ日付が変わって5/14、テラスハウス新シーズンがスタートします。

 私はテラスハウスには前シーズン『OPENING NEW DOORS』で初めて知った新参なのですが、

 あまりの面白さ、特に終盤の加速度的な盛り上がりに、Netflixで前シーズン・前々シーズンまで一気見するほどにハマりました。

 そしてテラスハウスのためだけにNetflixに今月から再入会しました。

 前作は終盤まではFODの遅れ配信(4週遅れ)で追っていたため、今まではテラスハウスで検索した瞬間に絶対ネタバレを踏んでしまうので一切感想を見ることができませんでしたし、「テラスハウスに休日課長が加入!」みたいなニュースをおすすめされて死んだりもしましたが、

 今シーズンは最初から最速で追いかけるので、何もかもが楽しみです。


 まだどうなるかわかりませんが、当ブログでは、今シーズンは毎週感想記事を上げていきたいと考えています。

 それにあたって、テラスハウスの基本事項、魅力、楽しみ方、私なりのスタンスを整理しておこうと思います。


概要

テラスハウスに暮らす、見ず知らずの男女6人による“台本のない日々”をつづるリアリティーショー。

舞台は東京。2020年夏、56年ぶりにオリンピックが開催されるこの地で、 男女6人の新たな青春の日々がスタートする。

スタジオメンバーはYOU、トリンドル玲奈、徳井義実、馬場園梓、山里亮太、 葉山奨之。

TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020(バラエティ) | ザテレビジョン(0000953797)

 テラスハウスの基本的な流れとしては上記のように見ず知らずの男女6人が共同生活を行うことにあるのですが、意外と観るまでわからない点として

  • 卒業のタイミングは各人の自由。誰かが卒業したタイミングで同じ性別の別のメンバーが新たに入居してくる。
  • メンバー同士で恋愛することが必須ではない(特に恋愛せずに卒業する人や、既に恋人がいる状態で入居するメンバーも稀にいる)

 恋愛模様を追いかけるのはあくまで一部に過ぎず、6人の人間の生き方を追いかけるのがテラスハウスです。


テラスハウスの魅力とは?

 テラスハウスを観たことがない人の中で、その魅力が「甘酸っぱい恋模様にキュンキュンする」みたいな部分にあると思っている人がいるのであればそれは全くの勘違いです。

 以下、私がテラスハウスのどこに魅力を感じているかということを説明します。


反面教師コレクション

 テラスハウスの魅力については、2018年12月9日の『高橋みなみと朝井リョウ ヨブンのこと』で解説されている、朝井リョウさんの講座を聞いて頂くのが一番良いのですが。

 (東京編のネタバレが含まれていますが、今観てない人が興味を持つにはネタバレを踏むしかないと思っています)

 この回の後半に出てくる「反面教師コレクション」という形容はまさに的確で、

 テラスハウスにはいろいろな人たちが出てきて、その人たちがいろいろな失敗をしていきます。

 それは恋愛でもそうだし、仕事でも、同性同士の友人関係でも。

 「掃除をしない」「料理を手伝わない」「同居人への感謝の言葉を口にしない」といった共同生活の失敗から、

 「デートの時にお礼を言わない、楽しそうな素振りを見せない」「好かれていないのにオラつく」といった恋愛的な悪手、

 「酔っぱらったまま他人を説教する」「自分を棚に上げて他人を叱る」などのついついありがちなミス、

 そして「自分が努力していないことを責められると言い訳ばかりして逃げる」「自分のプライドが傷つかないように他人の発言を自分に都合の良いように解釈する」「本人のいないところでその人の陰口を言う」といった普通に人間として最低の行為まで、

 様々な失敗が生々しく映し出されます。

 そしてそういった人間関係のトラブルは必ずスタジオトークで受けられ、「若い時はああいうこともあるよね」なんてフォローとともに、どうすれば良かったのかが語られます。

 それを見て、自分はこうならないようにしよう、と考えるきっかけになるのです。


根っからの悪人はいないということを知る

 しかも、それを行うのは別に極悪人でもなければ、それを悪意を持ってやっているわけではなく、

 自分では正しいと思っている選択の積み重ねで起こしてしまうのです。


 例えば実際の社会でも、浮気や不倫、ドラッグなど、それをしたからといってその人が100%真っ黒な人間だとは言えない事件がたくさんあり、

 それに対して、その一件だけでその人の全てが真っ黒だと信じ込んで、それ以降その人が何をしても批判するような人たちが、SNSやYahoo!ニュースやワイドショーにたくさん見受けられますが、

 人間は善と悪にはっきり二分されるわけではなく、一人の人間に善い部分と悪い部分があるだけなのだということを思い知らされるのが、テラスハウスなのです。


 それを「こいつらは最低だ」と叩いて炎上させる人たちもいますが、私がしたいのはそうではありません。

 「こういう人はこういうことやってしまうよね」という理解と共感を示す教材にし、同時に「自分はこういうことを本当にやっていないのだろうか」と振り返る反面教師にするのです。

 例えば私が3ヶ月前にハワイ編(ALOHA STATE)を観た感想はこうでした。

 さすがにALOHA STATEの展開のネタバレは気にせず書きますけど、「最初は杏奈にアプローチしていた大志が、後から入ってきた仁希に惹かれてどっちに行けばいいか迷っているということを杏奈本人に言っちゃう」という、悪手中の悪手、

 でも、「言わなくていいことまで全部言っちゃう、正直に自分の考えていることを全部話すのが人間関係において誠実な態度だと思っている、自分に自信がないのでとりあえず相手に全て話して助言を仰ぎたくなる」みたいなことって私も凄くあるし、親しかった友人とかにはめちゃくちゃそういう態度で接してるなあと……。

 だからこのブログに全部書いてる「今の会社への不満」とかもそうだし、最近は少ないけど「友達と会っても会話が弾まなくて楽しくない」みたいな、絶対内に秘めておけばいいことを結構SNSとかブログに書いちゃう。というよりも、それをあえて言わないという判断をすることが相手に嘘をついているような気持ちになってしまう。

guility

 まさしく反面教師。しくじり先生よりしくじり先生。

 テラスハウスを観て出演メンバーを責めるのは間違った見方です。まして本人のインスタに突撃なんてもってのほか。

 自分にそういうところがないかを常に考えるために最適な教材です。


人間の多面性と多様性

 テラスハウスに関して、台本があるかどうか、ヤラセかどうか、スタッフの意思が反映されているかどうか、と言えば、もちろん多かれ少なかれ確実にあるでしょう。撮影OKのお店やスポットを選んでデートに行き、抜群のカメラワークでそれを撮っている時点で、スタッフと相談していないわけがないので。

 ただ、そんなことは本当にどうでもいい話で、

 なぜなら、「カメラが入っているからといって人間は100%自分を偽れるわけではない」からです。

 「この日にここでデートしてください」ということはスタッフとメンバーで相談して、カメラが入っていることも意識しているでしょうけど、その前提であっても自分が全く思っていないことを言ったりはしないでしょう。会話には必ず本心が100%でなくても含まれるし、その場では言わなかったことも必ず後で暴かれる。

 最初は猫かぶっていた人の本性が徐々に見えてきたり、カメラが回っていないシーンの振る舞いを他のメンバーに暴露されたり、ということも含めて全てをリアリティショーにしてしまうのがテラスハウスの唯一無二の発明なのです。


 そして、人間の多面性を感じることは、「誰かに揉め事が起きる時に、どちらが100%悪いということはない」「どちらかが良い人だという先入観を持って判断してはいけない」という教訓にも繋がります。

 軽井沢編については、どうしても前情報なしで観てほしいのでネタバレは避けますが、途中までは悪い部分が1つもないと思われていたメンバーが一気に悪人に転じるという叙述トリック的展開は凄すぎました。あの山里亮太ですら完全に善人だと信じ切っていて、そのメンバーに危害を加える人を悪者扱いしていましたが、

 視聴者もスタジオメンバーも全員がバイアスにかかってしまっていたということ。あの一件があったので、

 これから始まる新シーズンでは誰かを全面的に信用してはいけない、「この人は絶対に性格が良い/悪い」みたいな思い込みをしてはいけないなと肝に銘じながら観るつもりです。

 それは同時に、この社会に生きる人間の多様性を認めることにも繋がると思います。


スタジオメンバーの解説

 テラスハウスを最大限楽しむにあたって、スタジオメンバーの6人の副音声は欠かせません。

 恋愛マスターのYOU・徳井が、童貞のヒーローである山里に解説する構図、3人のやり取りが下ネタに寄ると嫌悪感を示すトリンドルなど、それぞれの役割がはっきりしています。

 山里がメンバーを叩きすぎると女性陣が本気で怒ったり、メンバーの恋愛面での不可解な行動をスタジオが責める流れになると徳井が「でもこういう気持ちはわからんでもない」と理解を示したり、そのバランス感覚が本当に絶妙。

 軽井沢編で加わった葉山奨之さんも、初期は無理に大声で発言していてネットで叩かれたりしていましたが、途中からはちゃんと空気を読むようになりました。意外とあまりモテないっぽいところがあり、山里さんと4対2の構図が増えたことで、俳優枠が割と置物に近かった過去シーズンよりもさらにスタジオコメントの深みが増しました。


 そして副音声のもう1つの楽しみ方は、純粋に6人がリアルタイムの大喜利大会をやっているところです。マッサージをしてあげるシーンを「インドの前戯」、整形した聖奈を「アバター」など、ただ面白がっているだけのコメントの数々。やはりYOU・徳井・山里の3人が群を抜いてセンス抜群なコメントを添えて笑いを取っていきますが、最近ではトリンドルが一番口が悪くなっていたりもします。

 住人に対して普通に失礼すぎるコメントも連発しますし、たまに言い過ぎじゃないかと思うところもありますが、それも含めて楽しむことができます。

 この記事は結構道徳教材寄りの書き方をしていますが、何も考えずにただのバラエティとして観てもめちゃくちゃ面白い番組です。


テラスハウス今シーズンを追いかけるにあたって

 これから毎週、このブログでテラスハウスの感想を書いていきたいと思っているのですが、

 それには3つの目的があります。


自分が毎週何を思って観ていたかを記録する

 やっぱりその時々でどういう感想を抱いていたかを記録するのは大切なことだと思っていて、特に軽井沢編のように善悪の価値観をひっくり返される展開が今後も起きるのであれば、

 自分がいかに先入観を持ってその人のことを観ていたかというのを記録しておくのは、後々の変遷を振り返るためにも意味があるかなと思います。

 たぶんその結果、「あの時何でこんなこと書いてしまったんだろう」と後悔することも絶対あると思うのですが……それはそれとして。

 同時に、テラスハウスを観ながら自分のことについて考える機会も増えていくと思うので、そういう日記的な部分としても使っていきたいと思っています。

 なので、自分語り的な内容も多分に含まれることをご了承ください。


出演メンバーに悪意を向けないテラスハウスの見方を示す

 山ちゃんねるは仕方ないとしても、サイゾーウーマンみたいなネットニュースサイトでさえも出演者を叩くことを煽る記事が結構あって、それはどうなのと思っていました。

 一般的に見て擁護しがたい行為に走る人が現れたとしても、それはあくまでエンターテインメントの世界の話だと思っていて、

 「何でそういう行為に走ってしまうのか」「それは自分と全く違う人種の行為ではないのではないか」「自分がそういうことをしてしまう可能性は本当にないのか」ということを常に考え、共感を示していきたいと思っています。


社会の多様性を肯定する

 共感するだけでなく、自分の中に絶対生まれない考え方に対しても理解を示さなくてはならないとも思います。

 結局今の社会……特にネットで起きる炎上のようなものは、「自分が正しいと思っているもの(道徳)が誰に対しても絶対的に正しく、そこを外れた人は否定しても良い」という空気が問題になっていると思っています。

https://oswdiary.net/archives/5826

 それに対するオルタナティブな価値観を持ち続けるためには、どんな人に対しても「そういう考え方の人もいる」という事実を呑み込まなくてはならないし、そのための題材としてテラスハウスは常に最適です。


最後に

 いよいよ24時から新シーズンが始まります。

 史上最高の反面教師コレクションが揃った軽井沢編の衝撃を超えることはなかなか難しいかもしれませんが、それとはまた違った魅力が出てくることでしょう。


 あと、先に言っておきますが、テラスハウスはそのシステム上、話が進むほどにヤバいメンバーが増えていきます。これは当たり前で、まともなメンバーはまともに恋愛をするか夢を叶えて卒業していくからです。

 最初はスロースタートかもしれませんが、東京編もハワイ編も軽井沢編も最後にはちゃんと衝撃の結末が待っていたのですから、信じて良いと思います。


 この記事を読んで興味を持った方は、ぜひNetflixに入会して観ましょう。

 まだテラスハウスに触れていない方は本当に幸運です、過去作品を今から一気に見れるのですから。軽井沢編だけでも観てください。30日間無料体験できます。

https://www.netflix.com/jp/title/81077065