Our Story's Diary

こころを動かされたものと、動いたこころのこと

『アンナチュラル』3話と『anone』3話がどちらも度を超えて不快だったという感想

 もうどちらも4話が放送されてしまったので今更ですが、どうしても我慢できなかったので、

 アンナチュラルの3話とanoneの3話が本当に観ていて苦痛だったという話を書き残しておきます。

 それぞれの話の概要などは説明しないので、観ていない方は調べるか公式有料配信サイトで観てください。


 まず、現在放送中のドラマ『アンナチュラル』。

 最新4話はまだ観ていませんが、先週放送された第3話は、私にとってはもう本当にひたすら不快な回でした。

 何とか我慢して最後まで観ましたが、拷問のような1時間を過ごしました。

 男女差別で酷い暴言を吐き、反論する石原さとみをヒステリーだとレッテル貼りして陥れる検察官の烏田。権力側の人間による陰湿な嫌がらせが続き、最後の最後で何とか逆転したとはいえ、観ている最中はもうその男を殴ってしまいたくなるような、スマホを投げ捨てたくなるようなストレスだけが溜まり、何であんなゴミのような人間を殴ったら手を出した方が悪くなってしまうんだろうと日本の司法制度にまで疑問を覚え、限界まで溜まったストレスに一度耐え切れなくなってTVerからホーム画面に戻るほど。

 5分ほど他のことをして気持ちを落ち着けて、何とか視聴を再開しましたが、イライラは募るばかり。

 何とか後半には中堂さんの活躍によって解決はもたらされましたが、

 そのストレスは視聴後も決してゼロに戻ることはありませんでした。あまりにも強烈な不快感に見舞われ続けたので、いくら米津玄師のエンディングで良い話に見せかけられたとしても。


 私自身、このような中盤で苦しめられた主人公が終盤でひっくり返す構成がドラマとして理想的であることに異論はありません。

 おそらく、今後もこのような逆転劇の展開が続くのでしょうし、おそらく最終回の1つ前の話では、1時間かけてずっと暗い展開が続き、来週までピンチの解決が持ち越されることでしょう。アニメ『おそ松さん』1期の最終話1つ前のように。

 最終的にハッピーエンドであったり幸せになるゴールを描くためには、その過程で不幸にならなければならないし、強大な敵に一度陥れられなければその敵の強大さを描けないことにもなる。

 また、ドラマの場合は対人ゲームと異なり、快感と不快感のタイミングを自在に設定できるので、途中でどれだけ不快な状態を作っても、それを後で回収できるという見込みが立てられるのでしょう。

 ただ、そうはいっても、観る人を不快にさせることを意図的に行うエンターテインメントって何なのだろう?というイライラが限界ギリギリまで来ていて、ちょっと4話以降を観るかどうかを躊躇ってしまうほどにきつい回でした。

——————–

 『アンナチュラル』3話を観終えても不快感を拭い去ることができなかったのにはもう一つ理由があって、

 現実的な敵の設定に対して、その対処法が非現実的であるからです。

 男女差別も検察という権力の横暴も、頭の回転が早いだけで他者を陥れることを厭わない人間が社会から評価され報われる構造も、現実世界に存在する問題ですが、

 法廷でも当たり前のように暴言を吐いて敵を論破していくダークヒーローなんてのは現実世界に存在しないでしょう。

 まるでスカっとジャパンのような陳腐さ

 私が今まで生きてきた中で一番観て不快だった番組がスカッとジャパンなのですが、それに近いメソッドだと感じられて、

 あのストーリーを楽しめる人間というのはむしろ、現実世界で男女差別に加担している人間だとすら思っています。

 架空の世界でしか起こり得ない勧善懲悪だから、現実世界での自分の悪が決して揺らがない。そこから得ている自身の快楽を奪われることがない。

 そんな安心感のある物語が観たい人にとっては最高のストーリーでしょう。


 でも、現実世界の男女差別や上下関係に苦しんでいる人間に対して、あのような現実に起こり得ない夢を見せることは、いったい何の救いになるのか。それはむしろ追い討ちではないのか。

 解決もできないし救済もできない現実世界の悪を中途半端に物語に組み込んで、まるで解決可能な問題であるかのように見せかける物語の構築は、既存の価値観への挑戦に見せかけたむしろ保守的な価値観の強化でしょう。


 例えば、「原発反対派のプロジェクトチームが代替エネルギーとなる革新的な発電技術を開発して電力問題を解決する」というドラマがあったとします、社会問題を主軸に置きつつ起承転結もあって面白いストーリーかもしれません、

 でも、現実世界の原発問題は、ありもしない代替エネルギーの発明で全てが救済されることなんてあり得なくて、私たちがライフスタイルを変えて地道に電力消費を減らすこと、同時に利権としがらみに塗れた企業と政府のつながりを断ち切ること、これらでしか解決できないわけですから、

 そのようなドラマは、「現状のまま、私たちが何もしなくても問題が解決する可能性」を見せてしまうことで、問題の深刻さを薄める、悪影響のある作品になるでしょう。

 『アンナチュラル』が3話でやった、男女差別に対して現実世界には存在し得ないヒーローに解決してもらうという展開は、それとどう違うのか?と思わずにはいられません。


 ラスト、石原さとみの「今回は法医学の勝利」という言葉でこのあたりの問いに対する回答を見せたように思えますが、

 結局のところ今回の問題を解決したのは法医学ではなく中堂の現実離れしたディベート力の高さに尽きるわけで、それは「白を黒にする」烏田がしようとしたことと何がどう違うのか。

 正しい方が勝つ、良い人が報われる、ではなく、ただ単に口の上手い方が正義であり勝者であるという構造をより明確にしただけでしょう。

——————–

 同様のことが『anone』3話にも言えました。ずっと不快でした。

 1時間通して強く感じたこととして、いくら何でもあの西海の言動は醜悪以外の何物でもない。もう途中から西海に対する憎悪のみで支配される時間が続きました。

 上司に苦しめられ、社会から迫害を受けていた人間であったとして、それが上司を射殺したところまでは同情の余地があったとしても、その後、拳銃を持って持本やハリカを脅し、阿部サダヲの顔に水をかけ、殴りつけるのは、まともな人の心を持った存在のすることではないし、あんなことができるのは人間ではない。観ながら「早く報いを受けろ」というストーリー展開を願い続け、3話の最後で自殺したことで「何とか間に合った」と安堵してしまった。

 これで、持本の説得に応じて心を入れ替えるとか、受けた被害と行った加害をチャラとして手に入れた身代金で第二の人生を送るとか、あり得ない。死ぬべき人間が死んだのだ、と思いました。

 同時に、そのような人間が死ぬ方法が自殺というのもやはり非現実的で、ハリカや持本や青羽が立ち向かって解決させられなかったのか、とも。例えば現実世界で西海のような人間に対峙させられた人間は、相手が死ぬのを祈るしかないのだな、というような。


 そうまでして伝えたいメッセージがある、というのは簡単だし、ストーリーを最後まで追っていけばどうなるかわかりません。

 『カルテット』と同じ方のドラマであることから考えても、必然性のある悪であることも想像はできます。

 でも、私は不快になるためにドラマを観ているのか?とずっと自問しながら観ることになったし、

 そう自問しながらドラマを観るという、そんな時間の過ごし方が本当に自分にとって必要なものなのかを考えてしまいました。

——————–

 話は変わりますが、最近、ゲーム『Splatoon2』をやっていると、プレイの中で「楽しい」と感じる時間よりも「つまらない、不快、クソゲー」だと感じる時間の方が圧倒的に長いです。

 だいたい敵にローラーかボールドかスプラシューターかN-ZAPが2体以上いた時点で萎えるし、そいつらは全員イカニンジャ着けて潜り込んでスーパーチャクチ決めるだけの単純作業だし、まあ他にもたくさん。

 で、だいたいプレイ中もプレイ後も嫌な気持ちになってムカムカしながら終わることの方が多いのですが、

 なぜか1試合終わると「続ける」を選択してしまうし、次の日にはまた起動して遊んでいる。


 これは何でだろう? と考えていて、最終的に私は、「人間は不快になりたい生物なんじゃないか」という結論に至りました。

 つまり、「1時間遊んでいてずっと楽しいゲーム」と、「1時間遊んでいて50分つまらなくて10分だけ楽しいゲーム」だったら、後者の方が長い時間遊びたくなる引力を持つのではないか。

 というか、その快感と不快さの波が、一般に「中毒性」と呼ばれるようなものなのではないかと。


 不快と快楽の繰り返しによって惹きつける。原理としてはドラッグやDVと同じです。

 と言ってしまうと何か良くないことのように思えますが、

 人は完全に自分の思い通りになってくれる存在よりも、自分の予想外の行動を取ったり、期待と違うことをするような存在に惹かれるのではないか。多くの恋愛物語もそうなっているし、実際の恋愛でもそうなのでしょう(1)TERRACE HOUSE OPENING NEW DOOR 2nd Weekでのチュートリアル徳井さんの発言より


 『Splatoon2』も『アンナチュラル』も『anone』も観ていて不快になる、イライラする、ストレスが溜まる、ムカムカする、

 でも、そんな作品がこれほどまでに世に溢れているということは、それが求められていることに他ならないのではないでしょうか。


 アメとムチ、と表すと、非常に単純な、わざわざこんな記事で長々と書く必要のなさそうな話に着地してしまいますが、

 例えばanoneの視聴率が苦戦しているのは、ムチの長さに対してアメが釣り合っていないのではないかと思うし、それがながら見前提となっている現代のテレビと相性が良くないのではないかと思います。

 ちょっと不快な展開があればTwitterを開いて別の物語に逃げ込むことができるので。これが映画であればまた別だと思うのですが。

 そういう意味で、『Splatoon2』が高い中毒性をキープしているのは、一度試合が始まってしまえば5分間は他のメディアに逃げ込むことのできない、ゲームというメディアの強さにあるのでしょう。

——————–

 『anone』の苦戦が示すように、今の時代のテレビは不快感を与えないことが求められすぎているのも事実だと思います。

 例えば日テレのバラエティの強さは「大して面白くもないけど絶対に観る人を不快にさせない」作りにあって、『イッテQ』『有吉ゼミ』『ヒルナンデス』など挙げればキリがありません。

 そのような没入感と対極にあるエンターテインメントの在り方は、現状維持、現状肯定のための物語なので、現実世界に不満を持っていない人たちに寄り添ったものであると言えると思います。

 『ガキ使』の黒塗り問題で「何が悪いのか」と軽々しく言えてしまうような人間のための番組です。


 快感と不快感のサイクル、どこでアメを与えるかというリズムの問題として考えると、

 『anone』はそもそも1話通してもほとんどアメが貰えないのに対して、『アンナチュラル』はきっちりと1話の間に解決を持ち込んでいるので、それがわかりやすいし、ある程度予測がつく展開であるとも言えます。

 不快感が大きければ大きいほど、それは一部のファンにとって「刺さる」ものになるのかもしれません。例えば『魔法少女まどか☆マギカ』や『結城友奈は勇者である』といったアニメが、1クールかけてひたすらファンを苦しめながら、最終回で圧倒的なカタルシスを生み出したように。


 ただし、物語に没入感を与える方法は、『アンナチュラル』が行うような、

 現実の問題を模倣した悪を設定して、それをおとぎ話のように非現実的に解決する、桃太郎のようなメソッドにしかないのでしょうか?

 そうでない物語だってたくさんあるし、むしろそういうメソッドに頼らなかったことが『逃げ恥』が評価された一因ではないかとも思います。

 現実社会で起きている問題に手を出すからには、それによって実際に被害を受けている人たちに何か救いになるようなものを与えられる作品であってほしいし、そうでないなら「この作品は100%創作の、現実とは何の関係もない話ですよ」という態度であるべきではないでしょうか。


 『anone』は元々ターゲットをある程度絞って届けようとしているので、私のような安直で浅薄な感想を持つ人間に向けられていないこともわかるし、おそらくそういったステレオタイプ的な善悪の構造にも異を唱える物語に展開していくことも想像がつくので、まだ理解できますが、

 まるで『逃げ恥』に続く価値観の転回を促してくれそうな雰囲気を見せながらも全くそうなっていない『アンナチュラル』はやはり不快な作品であると言わざるを得ません。

 このような感想を払拭してくれる展開が4話以降で起きることを個人的には願っています。そうならない方が大多数の人にとっては良いのだろうと思いますが。

References   [ + ]

1.TERRACE HOUSE OPENING NEW DOOR 2nd Weekでのチュートリアル徳井さんの発言より
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