「isai V30+」レビュー、個性は薄くても満足度の高い"全部乗せ"
auブランドでLG開発の「isai V30+」が12/22に発売されました。
今年はauの学割が早めに発表されたこともあって、待ちきれずに発売日購入しましたが、非常に満足度が高く、欠点がほとんどありません。
一方で、特筆すべき個性が見えづらいので、買う決め手に欠ける部分もあるかと思います。
そこで、実際に使ってみた結果、どんな点が良くて、どういう方にオススメなのかを書いていきたいと思います。
私自身も、これまで日本製(KYOCERA)のスマホをずっと使っていたこともあって、初めての海外製、しかも韓国製スマホに対する不安も多少はありました。
それでも、(グローバルモデルやdocomo版とほとんど違いがないとはいえ)auブランドのisaiシリーズであり、機能的にも問題ないと思い、買ってみました。
Contents
一言でいうと?
全部乗せ。尖った部分がなさすぎて逆にニッチになっているスマホです。
突出して他の機種に勝っている部分はあまりないけれど、総合点では1位になり得る完成度。
概要
「isai V30+」はLGが開発したハイエンドスマートフォン「LG V30+」をベースに、日本向けにワンセグやおサイフケータイといったいわゆるガラパゴス機能を追加したものです。docomoからもほぼ同じ仕様の「V30+ L-01K」が出ています。
isai V30+(イサイ ブイサーティ プラス) LGV35|スマートフォン(Android スマホ)|au
isai V30+ LGV35 | スマートフォン/タブレット | LGエレクトロニクス・ジャパン
基本仕様はメーカーページを見てもらうのが一番早いのですが、簡単にまとめると
- 有機ELの超高画質(2,880×1,440)ディスプレイ。完全ベゼルレスではないがほぼ全画面
- Snapdragon 835搭載、RAM4GB、2.45GHz+1.9GHzのオクタコア。現行機ではほぼ最高性能
- 高いカメラ性能、他社にはない広角ワイド写真が撮れるデュアルレンズ
- B&O PLAYブランドがチューニングした超高音質な音楽再生
- 顔認証、指紋認証(背面の電源ボタン)、音声認証などのロック解除に対応
- Qiでの無線充電対応
- 防水(IPX5/IPX8)・防塵(IP6X)・耐衝撃
- ワンセグ・フルセグ・おサイフケータイなどのガラパゴス機能
- 75 x 152 x 7.4mm / 158g、薄くて軽いボディ
- VRプラットフォーム『Google Daydream』に対応(別売のゴーグルが必須)
これらの使い勝手がどうなのか、実際使ってみての感想を書いていきます。
ちなみにQiでの無線充電対応が、ベースとなったLG V30には載っているのにau版のページでは一切言及がなかったため、発売前に若干不安視されていましたが、普通に使えます。
(私はQi充電器を持っていないのでまだ使ったことはありません)
私自身は2016年3月に購入したDIGNO rafre KYV36からの乗り換えです。ROM16GB、RAM2GB、1.2GHzクアッドコア、1280×720液晶という2年前のミドルレンジから現行最高スペック、3DSからSwitchに変えたようなものなので、以前からGalaxyなどを使っていた方にとっては過剰に驚いているように見えるかもしれませんが差し引いて読んでください。
パッケージ開封
まずはここから。
開封写真は持っているiPad mini 4で撮影しています。
箱。シンプルな箱。
開封後と電源起動時。有機ELらしく黒がしっかり黒いです。
ちなみに本体カラーはauではオーロラブラック/モロッカンブルー/クラウドシルバーの3色。その中から選んだのはブラックです。
自分の身の回りにネイビーのものが多くて何となく飽きていたためブルーは候補外。シルバーとブラックで悩んだものの、自分の希望よりもシルバーがかなりシルバーでした。
鏡かなと思うくらい光の反射が強くて、裏返すと自分の顔が映って嫌になったので、これを日常的に使うのは厳しいと思いました。反射を抑えたグレーっぽい色だったら選んでたと思う。
この機種、特にブルーとシルバーはサイトで見る写真と実機の印象が結構違うので、色を決める前に一度auショップや家電量販店などに実物を見に行くことをオススメします。
同梱品は取扱説明書の他に、クリアケース、イヤホンジャック兼ワンセグ用アンテナ、SIMカードスロットを引き出すための金具、画面クリーナー。
docomoではDaydream ViewやB&Oイヤホンが付属するようですが、その分auよりも高くなっているので一長一短。個人的には高くなるくらいなら別に要らないのでありがたいです。
クリアケースは簡素ですが、使っていて特に困ることもありません。ブックタイプケースを使う方でなければ、この付属ケースをそのまま使っても悪くないんじゃないかと思います。
取り外しも簡単で、充電ケーブルやイヤホンを差したままでも付け外しができるので、外出時だけ付けるのもアリ。ケースにバンカーリングをつけておくことで、リングが邪魔になる時はケースごと取ることもできます。実際に私はクリアケースにバンカーリングを貼ってそのまま利用しています。
ハードウェアとOS……軽さが正義
ハード面の特徴はとにかく薄くて軽い。以前使っていたスマホより若干幅が広いので持ちにくいかと思いましたが、その軽さもあって持ちにくさは全然感じません。すぐに慣れました。
「ほぼベゼルレス」なので、縁までスクリーンが出ているGalaxy S8のようなインパクトはありませんが、そのおかげで持つ時にタッチを誤爆してしまうことも少ない。
それでいて18:9の大画面の情報量、有機ELによる美麗なスクリーンと画面といった特徴はしっかり備えています。液晶から乗り換えた時の画面の美しさは本当に感動的。
iPadのRetina Displayも十分に綺麗で買った時は感動しましたが、有機ELでこの密度を見せられるとiPadの画面にすら不満を覚えるようになり、人間の欲望は際限がないんだなと思わされました。
背面の指紋認証は持ち上げたら自然と指が触れる位置にあり、触れたら自然に画面がオンになるのでとても使いやすいです。
一方、「携帯を持ち上げると顔を認証してロックを解除する」という「画面OFF時の顔認証」はちょっとタイムラグがある印象。指紋認証の快適さに比べると顔認証自体もちょっと弱い。
iPhone Xのように「顔認証しか使えない」というわけではないので、あくまでメインは指紋認証として、「手袋をした状態で背面のボタンを押した時」あたりのロック解除に使う方がよさそうです。
私の場合、Bluetooth接続したスマートウォッチが近くにある場合にロックを自動解除する「Smart Lock」もオンにしているので、あまり使わないのですが……。
音声認証は試していません。ノックコードは、他人に開けられないようにするためとはいえノック6回以上という条件が若干煩わしいものの、それなりに便利。
また、「画面をダブルタップすると画面のON/OFFを切り替える」ノックオン機能も非常に便利。
この機種は電源ボタンが側面ではなく背面にあるので、テーブルの上にスマホを置いてある時に電源を入れにくいんじゃないかと思われますが、画面をダブルタップすればいいので気にならなくなります。
ちなみに任意のアプリ起動中でも、通知バーをダブルタップすることで画面オフにできます。
背面の電源ボタンを押すと、「電源ボタンで画面オフ⇒指を離す前に指紋認証で画面オン」という無限ループになってイライラしますが、この機能で確実にスリープできます。
有機ELの省電力性を活かしたAlways On Display(スリープ状態でも画面に時刻や通知アイコン、ミュージックプレイヤーなどを表示できる機能)も便利。わざわざ電源をオンにしなくても時間を簡単に確認できます。
通知ランプ(LED)がないというちょっと変わった弱点もありますが、上記のAODで十分に補えますし、個人的にはスマートウォッチ(Gear S2)を使っているので気になりません。
スペックとゲーム……文句なしで現行機最高レベル
ソフトのスペックとしては現時点で最高のSnapdragon 835を搭載し、RAM 4GB、2.45GHz+1.9GHzのオクタコア。当然あらゆる動作が快適です。
Android 8.0なのでマルチウィンドウにも対応していますし、2画面で2つのアプリを同時に開いていても重くなることはほとんどありません。
ゲームは難しいですが、YouTubeを再生しながらのブラウジングやTwitterなどは使いやすいです。(GoogleがYouTubeアプリにピクチャインピクチャ機能を無料で付けてくれるのがベストなんですが……)
また、内部ストレージ容量が128GBあるというのも特徴の1つで、16GBや32GBではカツカツになってしまいがちですが、アプリやゲームを次々に落としても気にならないし、プライムビデオやNetflixなどの動画をキャッシュして貯めこむ余裕もあります。
実際にリズムゲーム『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』をプレイしてみたところ、最高設定である「3D高画質(高画質ダンスMVを背景に流してプレイするモード)」でも処理落ち・カクつき・音ズレなど一切起きず、問題なく動作しました(音のタイミング調整なども行っていません)。
この薄さながら発熱もほとんどなく、背面がほんのり温かい程度。バッテリーもほとんど減っていませんでした。
音ゲーといえばiOSだとよく言われますが、スペックの差もあって今まで自分が使っていたiPad mini 4(世代的にはiPhone 6 / iPad Air 2相当)よりも快適にプレイできました。
他には『Pokémon GO』『どうぶつの森 ポケットキャンプ』くらいしかプレイしていないのであまり参考にならないと思いますが、いずれも快適です。
ベゼルがあるために画面端に手のひらが触れてしまうタッチ誤爆が起きにくいのも、一つの誤操作が命取りになるゲームプレイ時にはメリットです。
具体的なベンチマークは比較記事を参照してもらった方が良いはず。⇒2017年冬モデル7機種でベンチマークを測定 トップはiPhoneX – ライブドアニュース
総合スコアではiPhone XやGalaxy Noteには勝てないもののXperiaやiPhone 8よりは若干上。ただし3Dが若干弱い?という感じでしょうか。
とはいえ、ゲームが普通に動く以上のスペックは現状では必要ないし、発熱やバッテリー消費を抑えてくれるのであればこちらの方が便利なはずです。
オーディオとミュージックアプリ……シンプルに使いやすい
Hi-Fi Quad DAC搭載、高級オーディオブランドB&O PLAYのエンジニアとサウンドマイスターが音質をチューニング。
とのことですが、まずイヤホンジャック経由で有線イヤホンまたはスピーカーに繋がなければならず、AirPods愛用者の私にはあまり恩恵がありません。
一応有線イヤホン(といってもEarPods)で聞いてみましたが、Hi-Fi Quadのオン・オフで音が変わっているのはわかるけれど、CD取り込み音源程度では見違えるほど良くはならないかなあ……という印象。高級イヤホンとハイレゾ音源を買っていれば違いを実感できるのかもしれません。
一方、AirPodsでも使えてそれなりに便利なのが、プリインストールされている標準のミュージックアプリ。
Amazon MusicやGoogle Play Musicには定額配信やドライブ紐づけなどの機能が入っているため、使っていれば便利でしょうが使わない人からすれば鬱陶しい。
手持ちの曲が多いので、そういった機能から独立しているミュージックアプリの方が好みです。
イコライザはQuadBeatやピュアサラウンドで手軽に良い感じにできます。オーディオ詳しくないので詳細な差は語れませんが、Quad Beatの方がクリアにボーカルとか個々の音を聞き取りやすく、ピュアサラウンドは全体の雰囲気が良くなるイメージ。
ピッチ・再生速度変更も面白い。ピッチ変更のできるミュージックアプリって意外となくて、もちろんフリーソフト探せばあるんでしょうけどUIが使いにくかったりデザインがダサかったり広告が入ったり。
「普段聴く用とピッチ変更用」みたいにアプリ分けるほどではないので、普通に使える標準プレイヤーアプリにデフォルトでこの機能が入っていることはとても重要。
ピッチ変更は0.5ごとにキー+1 / -1に対応しているので、変なキーになることもありません。
キー-8にしてマツコデラックスの歌ってみただ!www とかいうニコニコの激寒手抜き動画みたいなことをする必要はありませんが、ピッチを0.5ずつ上げ下げするだけでも、ボーカルの違和感なしに曲の雰囲気がガラッと変わって結構楽しめます。
内蔵スピーカーはハイエンド機種にしてはモノラルですが、音の調整がされていることもあって、違和感があったり音量が足りなかったりすることはありません。そもそもスマホのスピーカーってそんなに使う機会ないですよね。
逆に、スピーカーが一箇所なのでスピーカーを塞いでカメラのシャッター音を隠しやすいという地味なメリットも。
カメラ……もちろん綺麗、広角も便利
写真ってある程度綺麗に撮れたらそれ以上は違いなくないですか? と個人的には思っていて、その「ある程度」の水準は大幅にクリアしていると思います。SNSに載せてもiPhoneと比べて明らかに劣る! という感じはしないのではないかと。
iPhone 8 PlusやGalaxy S8のデュアルレンズと違い、望遠ズームや背景ぼかし機能こそ付いていませんが、「タイムラプス」「スナップ」「パノラマ」などの、スマホカメラのメジャーな便利機能は一通り載っています。
画面の中央だけでなくどの部分にもズームできる「ポイントズーム」は静止画・動画の両方で便利だし、4枚の写真をひとまとめにできる「グリッドショット」なんかはInstagramやFacebookなどで情報量の多い写真を簡単に作れます。
1枚目はカメラアプリを使って撮影、2枚目は「食べ物モード」で撮影、3枚目はiPad mini 4で比較。……iPad mini 4って比較になるのでしょうか。
食べ物モードの方が綺麗に見えますが、被写体がしょぼいので何とも言えない……。
前面・背面カメラの切り替えがタッチではなく左右スワイプでできるなど、操作のしやすさもポイント。他機種に比べるとフロントカメラの性能がやや弱いとされていますが、個人的には自撮りとかしないのでそこまで気にならないです。
望遠レンズの代わりにisai V30+が搭載している、広角レンズ。通常より広い画角で写真が撮れます。
通常のカメラでは絶対に映らないであろう、知らない人すら見切れる。
もちろん後ろに下がれば良いだけではあるのですが、道路とかの位置関係で下がれないこともよくあるでしょうし、単純にわざわざ下がらずに撮れることが便利。
座った状態でほぼ同じ位置から撮ってます。そんなに歪みとかも見えないです。
まとめ …… スマホ選びの基準がちゃんとあるなら、ベストかも
「isai V30+」はとても使いやすいスマホで、満足しているのですが、いざ文章に起こすとそこまで伝わりにくい気がします。
というのも、「個性がないのが個性」と言えてしまうほど、尖っている部分、この端末ならではの個性が見当たらないからです。
強いて言えば価格帯でGalaxy Noteより安いというのは決定打になるかもしれませんが、価格だけを見ればスペックを落としたAquos Rや夏モデルのGalaxy S8などの方が安かったりもします。
iPhone Xのノッチのようなデザイン上の特徴もない、Galaxyのようなエッジスクリーンではない、かといってXperiaのような伝統的なデザインでもない、順当に極細ベゼル。
音楽再生とカメラの性能に力を入れているけど、そもそも2017年にカメラと音楽に力を入れていないハイエンドスマホなんて存在しない。「他のスマホよりちょっと明るい写真が撮れる」「他のスマホより自撮りが若干粗い」などといっても、大きく差があるわけではありません。2台持ちしない限りわざわざ比較する機会もないでしょう。
なので、実はこの機種の一番の欠点は、「何でそのスマホにしたの?」と聞かれた時に答えにくい、というところなのかもしれません。
Androidのハイエンドと言えばGalaxy、国内ならXperiaが言うまでもなくメジャーで、それと比べてisai / LGはブランドとしても知名度が低い。それをカバーするほどの尖った個性があるわけでもない。
しかし、スマホは他人に見せびらかすためのアクセサリーではなく、自分のしたいことをするためのデバイスだと考える人にとっては、それらは何の問題にもならないでしょう。
SNSに上げても下がって撮っただけだと思われそうな広角カメラも、MILスペックの耐衝撃も、密かに長いバッテリーの持ちも、宣伝に使うにはやや弱い要素ですが、間違いなく日々の使い勝手を確実に向上させる機能であり、マーケティング上の有利不利よりもユーザーの満足度を高めようとする気概が感じられます。
そして、大きな個性がないことは大きな欠点がないことと表裏です。
最高クラスのスペック、iPhone XとGalaxy以外に採用例の少ない有機EL & 18:9ディスプレイを備えつつ、デザインも癖がなく適度に持ちやすい極細ベゼル。
SIMフリー市場や海外スマホではオミットされがちな防水・防塵・耐衝撃・ワンセグ・おサイフケータイといったガラパゴス要素も網羅していて、カメラもオーディオも高品質。
ここまで過不足のない全部乗せデバイスというのは、現行のラインナップでは逆に希少です。
自分がスマホに何を求めるかを自分でしっかり把握できている方が、1つずつ要素を検討していけば、最終的に『isai V30+』(LG V30+)に辿り着くことは少なくないと思うし、
スマホ選びの基準を自分でしっかりと持っている人にとっては非常に満足度の高いスマートフォンであると思います。
……と思う一方で、全部乗せですから、何も考えずに選んでももちろん良いスマホです。他の人と同じスマホを使うことに重きを置く人以外なら、買って失敗したと思うことはないはずです。
それほどオススメのスマートフォンです。