Our Story's Diary

こころを動かされたものと、動いたこころのこと

Splatoonの1周年に寄せて(3) その意義と、自分にとっての意味を考える

 Splatoon(スプラトゥーン)1周年に寄せて、スプラトゥーンについて語る記事も3日目。最終回です。1日遅れてしまいすみません。

 初日はスプラトゥーンの魅力と中毒性について、2日目はスプラトゥーンのブームに繋がった任天堂ブランドとソシャゲブームという情勢について。

 語りましたが、まだまだ足りない、というか、一番書きたかった、スプラトゥーンというゲームが、この時代に生まれた意味。そして、私にとっての意味。

 そういうものを語りたいと思います。

——————–

目次(リンクではありません)

(1)Splatoonの1周年に寄せて、その魅力と中毒性の理由を考える

  1. Splatoonの魅力とは?

  2. 入口の広さと、奥の深さ

  3. 隙のない現実逃避

  4. 理不尽ではないランダム性

  5. 「お約束」がないからこそ

  6. 徹底的なストレスフリー

(2)Splatoonの1周年に寄せて、そのブームの理由を考える

  7. 任天堂への期待感と閉塞感

  8. みんなが「こういうブーム」を待っていた

  9. 「任天堂ブランド」とNintendo Direct

  10. スマホアプリでは成立しないゲーム性

(3)Splatoonの1周年に寄せて、その意義と、自分にとっての意味を考える

  11. 3DS・WiiUビジネスの集大成

  12. Splatoonが取り戻してくれたもの

  13. 「Splatoonが任天堂ファンを変えた」

  14. 岩田社長の、4年越しのアンサー

  15. Splatoonの今後のこと

  おわりに

——————–

 

11. 3DS・WiiUビジネスの集大成

 Splatoonが既存のビジネスへのアンチテーゼ的な役割を果たしたことを昨日の記事で述べましたが、

 一方で、これを「Splatoonの若いスタッフ陣が起こした偶然」ととらえるのは少し違うと思っていて、

 私はこれが、任天堂のここ数年間の変革の集大成であると考えています。

 

 DS・Wii時代に「ゲーム人口の拡大」を掲げ、いわゆるカジュアル層にリーチするようなテレビCMや宣伝攻勢で成功を収めたものの、インターネット上では、悪意が拡散されて増幅しやすいネットの特性を上手く利用したSONYに押され気味で、

 特に2000年代後半、インターネットを使う人がマイノリティからマジョリティになっていく中で、任天堂の今までの武器であった「幅広いターゲットに受け入れられる」「ローカルな口コミによって長く売れ続けられる」といったポイントがうまく押し出せずにいたと思います。

 幅広い層にリーチするマスメディアの影響力が急速に薄れたことで話題性をコントロールしづらくなり、

 同時に、インターネットによって日本中・世界中がリアルタイムに繋がったことで、話題の浸透も速く、そして話題の収束も圧倒的に速くなりました。

 そのような時代に適応したビジネスモデルとして、「一部の層から苛烈に搾り取る」ソーシャルゲームや、「コアゲーマーにターゲットを絞る」PS4が勢いを持つのは必然であり、

 任天堂も時代に合わせてそのようなビジネスに舵を切るべきだ、という意見も当然あったと思いますし、なかなか期待されるような業績を上げられない中で、そのプレッシャーも日に日に大きくなっていったはずです。

 

 2012年末に発売された『とびだせどうぶつの森』は、ソーシャルゲームの全盛期にあって、家庭用ゲームと任天堂の意地を見せたソフトでした。

 あらかじめ用意された膨大な数のアイテムに加え、継続的なアイテム配信などのアップデートを1年以上無料で続ける。

 そんな『とびだせどうぶつの森』の発売前、そして3DS・WiiUソフトのダウンロード販売やDLCビジネスがスタートした2012年頃に、岩田社長が繰り返し語っていた内容があります。

ソフトメーカーとしての任天堂は、どんなアイテムが出るかがわからず、いいアイテムが出るまで、何度もお金を支払って、それがいつの間にか巨額になっているというようなビジネスは志向しておりません。

2012年1月27日(金)経営方針説明会 / 第3四半期決算説明会 任天堂株式会社 社長 岩田聡 講演内容全文

「構造的に射幸心を煽り、高額課金を誘発するガチャ課金型のビジネスは、仮に一時的に高い収益性が得られたとしても、お客様との関係が長続きするとは考えていないので、今後とも行うつもりはまったくない」

2012年4月27日(金)決算説明会 任天堂株式会社 社長 岩田聡

これは「クリエイティブの対価としてお客様がお金を払ってもいい」と思っていただけるものと、そうでないものとをきちんと分けてメリハリのある展開をしたいと思います。例えば、「『どうぶつの森』でダウンロードコンテンツを出せば、ものすごくもうかるのではないか」と考える方がいらっしゃるかもしれませんが、逆にそれをやると、『どうぶつの森』というゲームがものすごくお金の力にあかせて遊ぶゲームに変わってしまって不健全になりかねないので、開発チームともよく相談し、一切そのような要素は入れておりません。

2012年10月25日(木) 第2四半期決算説明会 – 質疑応答

 あえてDLC要素を入れることなく、最初の価格を払ってくれたユーザーを楽しませるために全力を尽くして、コミュニケーションの広がり、ユーザーとの信頼関係を優先した。

 その結果生まれた『とびだせどうぶつの森』は、単なるメガヒットではなく、発売後品薄になり、それからしばらく週10万本以上売れ続ける息の長いヒットになりました。

 

 また、3DS発売後の2011年に、新たな情報発信の方法として生まれたNintendo Directは、様々な試行錯誤とキャッチボールを経て、単なる宣伝からエンターテインメント番組へと進化していきました。

 FE覚醒やNewマリオ2でスタートしたDLCは、NewマリオUの大規模追加コンテンツ『NewスーパールイージU』によって「追加収益の手段」ではなく「ソフト寿命の延長」「話題の再点火」という新たな意味が見いだされ、マリオカートやスマブラではDLC自体が1つのニュースになっていきました。

「ソフトの更新」による機能追加や、「追加コンテンツ」による新キャラクター、新コースなど、新しい要素の配信によって、発売から時間が経過しても、引き続き遊び続けていただけるようなキッカケ作りにも力を入れています。定番ソフトの稼働と勢いを維持し、寿命をより長く保つために重要な取り組みです。

2015年5月8日(金) 決算説明会

 「マスメディアが力を失った時代」だからこそ、「口コミによる拡散」がされやすい構造を用意しておき、

 「すぐに話題が移り変わる時代」だからこそ、「定期的なアップデートで話題性を持続させる」。

 これらの、インターネット時代に対する任天堂なりの回答だと呼べるものに、2011年時点で辿り着いていたとは思っていません。

 とび森、マリカ8のDLC、スマブラforの情報発信、そういった1つ1つのゲームの施策が成功体験として、

 同時に、ローンチ付近のタイトルでローカルに注力しすぎたNintendo Land・ゲーム&ワリオ、継続的なアップデートがほとんど話題にならなかったピクミン3、ゲーム内にプレイ映像録画機能を付けたのにほとんど使われなかったマリオカートTV、などの失敗も改善点として積み重なっていき、

 それらのフィードバックの結果、『Splatoon』という、インターネット・SNSの特性を完璧に知り尽くしたかのように見えるタイトルを、自力で探り当てるに至ったのだと思います。

 

12. Splatoonが取り戻してくれたもの

 ここで少し個人的な話をします。

 私は小学生の頃……というか幼稚園の頃から割とゲーマーで、というのも母親がスーファミ持ってたからなのですが、

 ともかくポケモンやカービィや、スーパードンキーやスーパーボンバーマンやドラクエVに熱中していて、中学生でもDSでドラクエ4569などたくさんゲームをしていました。

 しかし、高校2年頃まで、いわゆるテレビゲームからは割と離れていて、ポケモンBWを時々して、友達とマリオのDLプレイをするくらいで、それ以外のゲームはほとんどしていませんでした。弟が買ったドンキーリターンズやマリオWiiやリズム天国ゴールドなんかを、少し触ったりはしていましたが。

 そんな私を任天堂ゲームに引き戻した要因の1つが、間違いなくニンテンドーダイレクトでした。

 高2の1月に観たポケモンXYのDirectでその存在を知り、その次のDirectで発表されたドンキーコング リターンズ 3D で、それまで持っていなかった3DSをLL本体ごと買い、そのままポケモンXYにバンブラPに……と、受験生であるにも関わらずゲームしまくってました。……これで大学合格したのは奇跡でしかない。

 さらに、小中学校の頃はメーカーのことなんてほとんど意識していなかったのですが、Directを見て、そして社長が訊くや樹の上の秘密基地を読み漁っているうちに、任天堂というメーカーが好きになり、応援したいという気持ちがとても強くなりました。

 DSでは買っていなかった『とびだせどうぶつの森』などを買ったのも、任天堂のソフトを遊びたいという気持ちがあったことも関係したと思います。

 

 その一方。任天堂というメーカーに対する好意は、同時に過剰な期待にも繋がりました。

 任天堂ならこういうことをやってくれる、もしくは、任天堂はこういうことをすればいいのに、と思うのに、その通りにならない、もしくはできない。

 主力ソフトは次々に延期されるし、マリカのDLCは2弾で終了しちゃうし、スマブラのキャラクターチョイスは酷すぎるし、ポケモンORASも期待を下回る出来だったし……、と、任天堂の戦略のちぐはぐさにイライラが募っていきました。

 あと、小学校の頃から思い入れのあるシリーズの最新作である「ドンキーコングトロピカルフリーズ」に関しては、宣伝不足もさることながら、CMが本当に酷くて、キャラクター、特にディクシーを馬鹿にされたような気分になって不快でした。


 ↑任天堂の数あるCMの中で一番嫌い。

 2014年、マリカ8、スマブラfor、ポケモンORAS……と、任天堂が新作ソフトを出すたびに、期待して買ってみては、その期待の下を行く……という経験を何度もしました。

 そして、ここまで楽しめないのは任天堂が変わったからではなく、自分が変わったからなのではないか?とも考えました。思い出補正が強すぎるから。もう革新的なゲーム、私を驚かせてくれるゲームなんて、今後新たに生まれることはあり得ないのに、いつまでも期待している方が悪いのではないか……。

 そんな思いの中で、でもDirectを観続けて、2014年のDigital Eventで発表されたSplatoon。

 E3の初報時点で、ワクワクして、記事にも書きました。(→Splatoon!!

 その後、秋のDirectなどで情報が公開されるにつれて期待が高まる一方、また期待外れに終わるのではないか、1か月もしたら飽きてしまうのではないか、そういう不安もありました。

 しかし、Splatoonはそんな私の不安をすべて杞憂で終わらせ、

 上がりに上がった期待のハードルを易々と飛び越えていったのです。

 やはり任天堂は凄かった。こういうソフトが、たとえ1ハードに1本でも、生まれてくるのであれば、自分は任天堂というメーカーを追い続け、応援し続けていたい。そう感じました。

 

13. 「Splatoonが任天堂ファンを変えた」

 私は、2013年頃から確か2年半ほど、2chのハード・業界板、いわゆる”ゲハ板”に常駐していました。主に見ていたのは任天堂ファンが多いとされる「ソフト売上を見守るスレ」でした。途中からは、したらばの避難所しか見なくなりましたが。

 それまでゲハのことは名前しか知らなかったのですが、ポケモンXYダイレクトの後、どんな盛り上がりになっているかを覗きに行ったのがきっかけで、それから任天堂ファンとPSファンの空虚な煽り合いにずっと参加していました。まあ、前回の記事を書く程度には、業界とかビジネスとかの話も好きなので。

 当時、国内ランキングでは任天堂・3DSはずっと調子が良かったのですが、それでも、PS4の世界的な好調ぶりや、WiiUの誰の目にもわかる苦戦と明らかなソフト不足で、だんだんと空気が澱んでいくのが見て取れました。

 当初国内では苦戦していたPS4が、FF15やKH3やペルソナ5やアイマス新作などで段々盛り上がっていくのと対照的に、国内だけは(相対的に)調子の良かったWiiUが、そこさえも苦戦を強いられていった2014年は特にそうです。

 それでもそのスレに常駐していたのは、やはり任天堂について意見を言いたい、その話がしたい、と思っていたからだし、同時に、任天堂の現状に全く満足していなかったからです。

 決して悪いゲームを出しているわけではないし、メーカーとしては大好きだし、Directも面白い、でも、何かが物足りない……。昨日の記事でDirectの視聴者層として想定したのは、半分は私自身のことでもあります。私は任天堂のゲームはそれなりに買ってましたが。

 そんな任天堂に対する不満を、一瞬で吹き飛ばしてくれたソフト、それがSplatoonでした。

 ソフト不足も負けハードも最早どうでもいい、このゲームだけでずっと遊んでいられるし、この1本だけでWiiUを買った価値があった。それほどまでに熱中できるゲームでした。

 

1998年の秋、時のオカリナが任天堂ファンを変えた。 | N-Styles

 最古参の任天堂ファンブロガーの1人であるn-stylesさんは、時のオカリナが3DSでリメイクされた際の記事で、64当時のことをこのように表現していました。

なかなか発売されない新作タイトルにいらだち、他社で任天堂製品を模倣したようなソフト(なんとかカートとか)やハード(コントローラが震えたりとか)が出るたびに愚痴り合うすることもあった。今思うと、あの頃が任天堂ファンに取って一番苦しい時期だったかもしれない。

その鬱屈した空気を取り去ってくれたのが「ゼルダの伝説 時のオカリナ」だった。

延期を繰り返し、ようやく遊ぶことができた。3D空間で走り、敵を斬るリンクに驚愕し、神殿の立体的な謎解きに興奮した。

ハイラル平原の広さにため息を漏らしたとき、「ああ、このゲームが遊べるのなら、NINTENDO64が一番じゃなくてもいい」と心の中の暗闇が晴れたような気がした。

そう思ったのは自分だけではなかったようで、(あくまで自分の観測範囲での話だが)ゼルダ発売前後で、任天堂ファンサイトコミュニティ内の空気が一変した。他のハードでどんなゲームが出たとしても、NINTENDO64でゼルダが遊べたのだから、もういいじゃないか…そう悟ったような雰囲気になった。

1998年の秋、時のオカリナが任天堂ファンを変えた。 | N-Styles

 私にとってのWiiUに対するSplatoonは、まさにこのN64に対する時のオカリナと同じものでした。

 

 Splatoon発売から1ヶ月後、期待を上げまくって臨んだDigital Event 2015の内容に正直失望した私は、そのスレに愚痴と批判意見を書き込んだところ思いっきり他社ファン扱いされ、それをきっかけにゲハ関連のスレを一切見なくなり、現在に至ります。

 精神衛生上、ああいう場所から離れることができてよかったと今にして思うのですが、

 これもSplatoonが出たからこそで、ああいう煽り合いから降りても何も思わなくなった。

 今までは、「PS4よりもWiiUの方がよい」とか、「任天堂の方が将来性がある」とか、そういうことを言いたくて仕方がなかったし、「WiiUは酷いハードだ」と言われると「いや、そんなことはない」と反論したくてたまらなかったのですが、

 もはやそれすらどうでもよくなって、誰になんと言われようと、WiiUやPS4が週に何台売れようと、

 私はスプラトゥーンという素晴らしいソフトを遊ぶことができて、こんなに楽しい気持ちになれるのだから、それでいいじゃないか、と思いました。

 そう思った方が他にどの程度いたかはわかりませんが、少なくとも私にとって、スプラトゥーンはそれだけの価値を持ったソフトです。

 

14. 岩田社長の、4年越しのアンサー

 岩田社長が2011年にGDCで登壇した際、そのスピーチの最後で、スマートフォンゲームの流行に対する考えを述べています。

私たちは、お客様にどうしてもソフトの高い価値を認めていただきたいのです。

プレイステーションやXboxのビジネスはいくつかの点で任天堂とは異なりますが、この考えについては100%共有していると私は思います。我々は、高品質のビデオゲームソフトウェアの高い価値を証明するためにプラットフォームを設計しています。

しかし、ビデオゲームのビジネスを全く異なった方法で見る第2の方法も存在します。スマートフォンやソーシャルネットワークのプラットフォームの目的は、そのプラットフォームがつくられた目的もそうですが、私たちとは異なっています。

これらのプラットフォームには、ビデオゲームソフトの高い価値を維持する動機がありません。彼らにとっては、コンテンツは誰か他の人が作るものであり、彼らのプラットフォームにより多くのソフトを集めることが目標となります。より多くの量を集められればお金が流れるのです。量こそ利益の手段であり、価値は大した意味を持たないのです。

つまり、ビデオゲームビジネスに対する二つの全く異なるアプローチを我々は今見ているわけです。一つの方向性は往々にしてあまりにも巨大な投資が必要になるものであり、そしてもう一つは高い価値を保たないゲームを供給するものです。

しかし事実は、我々が生み出すものには価値があり、我々はその価値を守るべきなのです。

岩田聡 GDC講演内容|Nintendo

 岩田社長はスマートフォンゲームのビジネスに対して強い危機感を持っていました。それは、自社の基本無料ゲームを「Free to play(無料で遊べる)」ではなく「Free to Start(無料で始められる)」と呼んでいたことからもわかるように、ゲームの価値を下げさせないという強い意志です。

 2013年1月、日経新聞のインタビューでもこのような発言をしています。

 「私には私なりに思うことは当然あります。自分の商道徳から考えて絶対に受け入れられないことをやっている方たちがいるのも事実です。ですが、私の今の立場でそれを外に向かって発言できるかっていうのは、また別の話でね。しかも、今うちの業績が何の問題もないならいざ知らず、ずっと長いあいだ続いていた記録を途絶えさせてしまった張本人である私が他社さんのサービスについてあれこれいうのは、これは違うだろうと思っている」

 「ただ、我々は、お客さまが(任天堂や同社のゲームに)どれだけ敬意を持ち続けていただけるかで、長期的な関係が築けるかどうかが決まると思っているんですね。私は、そっち(射幸心をあおる手法)にいかなくても、ゲームビジネスの健全性を維持してみせると思ってやっています。それを世に示した1つの例が、どうぶつの森ですね」

任天堂・岩田社長が語る“本当の”ソーシャルゲーム 「3DS」「Wii U」の逆襲(前編)

 この中の、「お客様が任天堂に敬意を持ち続けてもらう」という表現が、実は任天堂のビジネスの本質を表していると思っていて、

 つまり、今のソーシャルゲームのようなキャラクタービジネスの多くは、「お客様が支えたいと思わせる」方向に作用しています。

 AKBのような三次元アイドル、アイマス(特にデレステ・ミリマス)やラブライブのようなアイドルゲーム、そしてグラブルやFGOなどその他のソシャゲも含めて、

 お金を払うことで優越感を得られ、周りから称賛され、注目を浴びることができる。人間関係を課金のための煽りに利用し、運営は共通の敵になることで客に優越感を与える、まさにソーシャルなビジネスです。

 少なくともSplatoonはそのような、ユーザーとユーザー、ユーザーと製作者の間に不健全な関係を築くことを徹底的に避けています。

 一例として、Splatoonは今まで何度もサーバー障害などの不具合を起こしましたが、実は一度も「詫びサザエ」を配っていません。ごはん・パン派のフェスの際も、サザエの配布数を変えたのは2回目以降で、1回目での補填は行いませんでした。

 それこそが、ユーザーをつけあがらせる……というと語弊がありますが、ユーザーと製作者の問題を安易な手段で解決せずに真摯に向き合う姿勢の現れではないかと思っています。

 

 岩田社長は「ゲームビジネスの健全性を維持してみせる」と言い、そこに向けて試行錯誤を続け、そのために自分自身も限界まで尽くしたのだろうと思います。

 任天堂全体のグローバルプレジデントを行いながら、同時にDirectや社長が訊くなどのイベントにも精力的に出るというのは、並大抵の体力でできることではなく、

 結果論として、それは偉大な才能の喪失を早めることにも繋がりましたが、

 最後の最後まで任天堂とゲーム業界のために力を尽くし、

 そして、その最後にSplatoonという、岩田社長時代の任天堂のアプローチ……DS・Wiiの「ゲーム人口の拡大」と、3DS・WiiUでの「インターネット時代での、プレイヤーとの健全な信頼関係を築く新たなビジネスモデル」……その全てが結実した傑作タイトルを世に送り出し、そのブームに火が点くさまを見て、この世を去った。

 岩田社長の早すぎる死に際して、それだけが救いだと思います。

 

15. Splatoonの今後のこと

 現在、任天堂はNXという新たなゲーム機によって、コンシューマーゲームにおける復活を賭けたチャレンジを行おうとし、

 同時にスマホアプリへの進出、さらには映画業界やUSJなど、ビジネスモデルの転換・多角化も目指しています。

 岩田社長が亡くなった後の新体制の任天堂が、岩田社長の拘りをどこまで引き継ぐかは未知数なので、もしかしたらスマホアプリ版どうぶつの森で容赦ないガチャ課金を行うかもしれません。(ポケモンコマスターで既にそのテストはしていますし)

 ただ、少なくともSplatoonに関していえば、もし、製作スタッフがそのブームの理由と魅力を正しく理解しているのであれば……そして、そうだと私は信じていますが、おそらく次回作でも追加課金は導入しないのではないかと思っています。

 それは、「お客様との健全な関係」「コンテンツ(IP)の正常な価値の維持」という部分に対して、今の時代にそれをイチから築き上げられることを証明した、Splatoonというタイトルの価値をちゃんと認識しているのであれば。

 

 Splatoonがここまでのブランドになった以上、次回作でガチャ課金を導入したり、DLCを導入したりしても、おそらくついていく人は少なくなくて、たぶん私だって即座に払っちゃうと思うし、それによって得られる利益はもしかしたら単純に続編を開発するよりも大きいかもしれないけれど、

 もっと長期的なスパン、大きなスケールで考えた時にどうなのか、

 Splatoonがもし課金制だったら、今のようにたくさんの人がその一本のためにWiiUを買い、発売から1年以上も熱量が持続し、Amiiboやサウンドトラックやその他の関連グッズがここまで売れることはなかっただろうと思います。

 キャラクタービジネス、IPビジネスの健全性というのはものすごく微妙なもので、そもそもが「キャラクター/ブランドによって実際の価値以上の報酬を得るもの」である以上、一歩間違えればあくどいビジネスになりかねません。

 (過去がどうであったかは別として)現在のアイドルマスターがやっていることは間違いなくその「あくどいビジネス」ですが、ではポケモンや妖怪ウォッチとどう違うのかと言われれば、答えるのは非常に難しい。

 ただ、そこに違いがあるとしたら、ユーザーとの間にどのような関係を築こうとするかという考え方、価値観、信念といった感覚的なものになるかもしれません。

 任天堂には今後もその、感覚的な部分を失わないでほしいと思います。そして、その部分を頑として譲らずに、『Splatoon』のようなソフトをしっかりとした形で世に送り出し続けられれば、

 それはきっと報われるはずだし、そういうものが報われる世界であってほしいです。

 

おわりに

 ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。

 初日が7800字、2日目が7000字、そして今日の記事が9100字(現時点)です。まあ今日のは引用も多かったとはいえ……。お疲れ様です。そして何より私が疲れました。

 Splatoonについてはちゃんと語りたいと思いながら、ずっと時期を逃していたので、この機会にすべてを吐き出そうというつもりで取り組みました。なので、これを読んで面白いと思う方がいるのかはわかりませんが……。

 私のSplatoonへの強い思いを感じてもらえたら幸いです。

 

 Splatoonにとって1周年は通過点でしかなく、様々な新情報によってむしろ再点火が起こったような印象すらあります。同梱版の再発売なんて全く予想外でしたし……。

 まだまだ盛り上がってほしいし、もっと多くの人がSplatoonの魅力にハマってほしいし、これこそがゲームというインタラクティブホビーのあるべき姿だってことを一人でも多くの人にわかってほしいと思うけれど、

 少なくとも私は、そうだとわかっている。なので、これからもSplatoonを遊び続けます。まだまだ飽きる気配はありません。きっとこの夏休みも、そして秋になっても、遊んでいると思います。

 最後に、改めて……、

 Splatoonというゲームを生み出してくれた開発スタッフの皆さん、岩田社長含めてそれに関わった任天堂のすべての人々、そして、Splatoonというゲームを一緒に遊んで、一緒に盛り上げてくれた、すべてのSplatoonプレイヤーに感謝しています。

 この記事では触れられませんでしたが、Miiverseやその他の場所で、Splatoonプレイヤーがみんなでその楽しさをシェアしたからこそ生まれたヒットでもあると思います。

 ありがとうございました。そして、これからもよろしくお願いします。

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  • ボンバーマン記事がSurface記事よりアクセス数で上回ってるー珍しい。どうやらTwitterで少しだけ拡散されたことは知りましたが。追記しとこうかな。

    (2018.08.15 20:02)
  • 1つのコメントや引用ツイートで全否定されてる気分になったり全肯定されてる気分になったりするのだから、コメントすることってやっぱり大事だな……。自分ではどうしてもそういうことが苦手だけど、有名人にリプライしたりするの、ちゃんとやらなきゃいけない気がしてきた。もちろん相手を人間だと思っていない失礼なリプライ送る人は全員ブロックされて然るべきだと思うけれど。

    (2018.08.15 14:57)

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